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cinematheque 30/- blog

いつも心にデカダンを。

とあるフランスかぶれの本棚(人生編)

今週のお題「わたしの本棚」

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あんまり写真が綺麗じゃないけど。。

これまでの人生で、自分の血肉になったであろう、かつおすすめの本を解説していきます。

 

『グリム童話全集』グリム兄弟編/高橋健二訳 全3巻(小学館)

『本当は怖いグリム童話』なるものがひととき日本でも流行りましたが、実際怖いです。というか、痛いです。

首が飛ぶ、井戸に落とされる、靴に合わせて踵をけずる…書いてるだけで辛いのですが、それでも!それを補って余りある「メルヒェン」の魅力がみっしり詰まった210話です。

おなじみの白雪姫、灰かぶり(シンデレラ)、眠り姫はもちろんのこと、動物たちがユーモアたっぷりに活躍する(或いはは失敗する)お話もあり、人も動物もいきいきと描かれるさまはいまなお魅力的です。

物心ついて、親に初めて読み聞かせをしてもらった本。自分におけるダークファンタジー愛好の原点です。

『暗殺百美人』飯島耕一(学習研究社)

詩人でありフランス文学者であった飯島耕一の小説。

20年前のド田舎の書店で偶然入手したものの、いざ読み始めてみるとチンプンカンプンでした。それでも強烈に惹かれて何度も読んでは格闘し、それ以来自分にとっては非常に大切な作品です。

“――不良の女、暴力少女、ブルセラ女子高生、みんな女の子は女の子であるそのことに耐えがたいのです。“

シュルレアリスムの枠組みに、90年代の世相と男と女が寄せ木細工のように嵌まった(そして軋むことなくはみ出している)、奇妙で美しい作品です。これを読んだ15歳はゴダールを知った歳でもあったし、自分のまなざしがフランスへ向かって行く重要なときでした。

『Le ravissement de Lol. V. Stein』•『Les yeux verts』Margurite Duras

日本でも『愛人(ラマン)』が有名なマルグリット・デュラス。デュラス作品は原著を読んでいると晩年の彼女の声が聴こえる気がして、それを頼りに読み進めるのが好きです。日本語訳での出版名はそれぞれ『ロル・V・シュタインの歓喜』(平岡篤頼訳)、『緑の眼』(小林康夫訳)。

デュラスは非常に美しい映画もいくつか撮っています。日本ではなかなか観られないのが辛いところですが、代表作『インディア・ソング』はDVD化もされているので機会があればぜひ見て下さい。主演女優デルフィーヌ・セイリグの色気と儚さにやられますよ。

『アンリ・ミショー ひとのかたち』国立近代美術館編(平凡社)

大学ではデュラス研究をするつもりでフランス文学を専攻したのですが、そこで出会ったのが、このアンリ・ミショーなる怪人。幻覚剤メスカリンの服用によって現れる言語と「線」(「絵」というよりしっくりくる)は、70年代のサイケデリックなムードとも全く異なる茫漠とした世界です。しいてたとえるならば、虚無や虚空(を見たこと自体ないですが)よりも「無い」世界。でも何が?と聞かれると答えられません。本作は2007年に出版され、同年に開催された企画展の図録としての役割も果たしました。

『細雪』『猫と庄造と二人のおんな』谷崎潤一郎(新潮社)

『ちくま日本文学005 幸田文』(筑摩書房)

学生時代、フランス的なものと同じくらい好きだったのが、初期の谷崎作品における退廃美でした。しかし後年かつての毒々しさは影を潜め、たおやかで繊細な表現が主になったこともあり、社会人になった自分も「日本の文章」の美しさ、そこから伝わってくる「日本人の生き方」について再度考えるようになりました。

『細雪』は長編小説の、『猫と庄造とふたりのおんな』は短編小説の傑作です。特に後者は谷崎が本来持つ嗜虐性とフェティシズム、そして晩年で得たこまやかな描写が見事に融合した珠玉の一作と思っています。

幸田文については、なぜ読み始めたのか思い出せません(笑)。しかし父露伴を看取った際の手記、また自身の青年期を振り返る『みそっかす』において、女としてはいささか朴訥な文章のなかに、父親譲りの厳しさ、そして深い優しさを見た気がして、こんな風に生きたいな、と思って以来繰り返し読んでいます。

『中国詩人選集 李白』武部利男注(岩波書店)

どんな状況にいても、この本を開けば美酒香る月の輝く夜にワープできます。

そういう意味ではグリム童話に近いものがあるかもしれません。究極の現実逃避本。

原文も訳もあるので、本来の味わいを楽しみながら理解を深められます。

『雪』オルハン・パムク/宮下遼訳(早川書房)

 自分の幼年期、思春期、青年期を代表する本をピックアップする作業のなかで、

「ではいま、自分にリアルタイムな影響を及ぼしている本はなんだろう?」

と考えた時、この本が浮かびました。いまも読み返しながらこの記事を書いています。

ドイツに亡命した詩人・Kaが故郷トルコで巻き込まれる小さな悲しい革命。 イスラム教の抱える矛盾や葛藤が、彼に出会う人々を通して描かれます。そうかといって、Kaが長年過ごしたヨーロッパ世界が正しいというわけにもいきません。

タイトルの通り作中を通して雪が降り積もりますが、寒くは感じない代わりにひたすら寂しい。彼の中世を舞台にしたサスペンス作品『わたしの名は赤』も非常にエキサイティングで、おすすめです。

 

ほかにも、荻原規子の『空色勾玉』、夏目漱石『虞美人草』が子ども時代〜思春期の強烈な読書体験だったのですが、記事が長くなりすぎるので今回は割愛しました。

今回は自分の思想に少なからず影響を及ぼした(人生編)でしたが、本のもう一つの愉しみ、(装丁編)もアップできればと思います。お題であるうちに間に合うかな…。