【読書】昭友堂に愛を込めて
新宿2丁目の角に古書店があった。名前を昭友堂という。良い意味で猥雑で、文芸・美術・ポルノともろもろが入りみだれて、専門の分野を扱う店とも違った面白い空間だった。
とりわけ店の外にあるショーケースでの小企画は秀逸で、たくさんの写真家・画家の作品集がここで特集された。篠山紀信、アラーキー、ヘルムート・ニュートン、べッティナ・ランス…、数え上げればきりがない。新宿に越してきて以来、このショーケースには大いに刺激された。
その昭友堂が今月の2日をもって閉店となった。大変に惜しいことだ。それで、今さら奮発してもしょうがないんだろうけど、写真の通り下記の本を購入した:
・『徳川夢聲の世界』三國一朗(青蛙房)
・『歴史とデカダンス』ピエール・ショーニュー/大谷尚文訳(法政大学出版局)
・『吉原の四季』滝川政次郎(青蛙房)
・『亀井滋明コレクション 19世紀ヨーロッパの染織』美術出版社
『吉原の四季』にはサブタイトルがあって、’’清元「北州千歳寿」考証’’とある。この題目から見た吉原の風俗史なのだろう。『19世紀ヨーロッパの染織』についてはお会計で負けに負けてくれて、こちらが恐縮するほどだった。わたしも繊維業界人のはしくれ、重要な資料として大事にします。
最後に奥様に、
「ほんとうにやめちゃうんですか?」
と訊いたが、答えは当然のことながら、
「ええ、やめちゃうんですよ」
だった。
こんなふうに気取りのない、しろともくろとも居合わせるような面白い古書店がどんどんなくなっていく。ほんとうに寂しいものだ。けど、あなたがたの心、本を愛する魂はいくばくかでも受け継いだつもりでいますよ。