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cinematheque 30/- blog

いつも心にデカダンを。

極私的ミュージックアルバムベスト3(2016年版)

musique(音楽)

なぜ3つしかないかと言えば(以下略

今年はさっそくいろいろ聴いてます。しかしその前に、やはり去年のことを。

3.SOLANGE『A SEAT AT THE TABLE』 

A SEAT AT THE TABLE

A SEAT AT THE TABLE

 

友達の家に遊びに行って、コーヒーを淹れてもらいほっと一息。

「で、どう?」

と向かいに座って微笑むひとは、まごうかたなきソランジュそのお人(妄想シアター)。

誰でも彼女のテリトリーに自然に招かれ、コーヒーでも外の眺めでも、なんでもそこにあるものに心をほぐされる。ほぐされながら、一方で「うん。よし(がんばる)」という気持ちになれる。「頑張る!」ではなくて、(がんばる)くらいのテンションなのが心地よい。でも、無礼な人はお断り。そういう強さももらえる。

やわらかくも毅然とした彼女の声に、女性としての本当の強さを感じます。極私的にはファッショニスタの印象が強かったソランジュですが、なかなかどうして。とてもとても良いアルバムです。

 2.RADIOHEAD『A MOON SHAPED POOL』 

ア・ムーン・シェイプト・プール

ア・ムーン・シェイプト・プール

 

このアルバムを聴いて喜んだのは、誰よりも私のようなオールドタイプのレディへファンではないでしょうか。 OKコンピューター以降のラディカルな進化に戸惑いを覚えながらも時にはしがみつき、ぶら下がり、

「ぼ、ぼくたち(わ、わたしたち)トムのことわかるからね!!」

なんて言ってみても、所詮こちらは凡人、挫折することも多々あったから。何に?トムを愛することに。

そういった本末転倒をきっちり回収して余りあるこのアルバム。懐かしさと新しさで、20年くらい時の流れが止まっていた自分の一部が前よりも勢いよく廻りだした気がします。やや単純かもしれませんが(私が)…。

1.Johann Johannsonn『Orphee』

Orphee

Orphee

 

ヨハン・ヨハンソン6年ぶりの新作。クラシックとエレクトリックのあわいで、さまざまなサウンド・スケープ(※1)を展開してきた彼の10年目の作品は、ドイツ・グラモフォン・レーベルでのデビュー盤でもあります。満を持していないわけがありません。

※1:あまり横文字を濫用したくないのだけど、この人についてはこの言葉しか思いつかないので…

(youtubeのリンクを貼りましたが、このブログ上では再生できない様子。もし興味を持たれたら、中央の再生をクリックした後に現れるリンクからyoutube上で聴いてみて下さい。)

youtu.be

まず、モダンで聴きやすいM1:「Flight From The City」 により、私たちはヨハンソンとの意識の旅に出ます。ピアノによるシンプルなメロディを高揚するストリングで押し拡げていくさまは、私たちの飛行が大きく翼を広げ、やがてこのアルバム『Orphee』の世界を俯瞰できる場所に導かれてゆくようです。

youtu.be

しかしながら、M2:「ヨーロッパに捧げる歌」 で思い知るように、私たちが眼下に見る世界はどこまでも険しい。ヨハンソンの中では、すでに一度世界は終わってしまったのでしょうか?そしてその世界とは、オルフェの属する神代の世界なのか、はたまた私たちが棲まうこの現代なのでしょうか。

その後も「沈んだ世界」「カオスとの契約」「塵の山」と続き、美しくも荒涼とした眺めを想起させる調べが続きます。その中を「ヨーロッパに捧げる歌」のフレーズが繰り返し現れ(「断章I」「断章II」)、鎮魂歌のような厳かさでその世界と聴く人を調和させてゆきます。

しかし、これだけの悲しい曲名、悲しい響きを聴くにもかかわらず人はきっと「ヨハンソン(≒オルフェ?)は世界を決して諦めないのだな」と感じることができるでしょう。少なくともわたしはそう思うので、「ノロジカや野の雄鹿にかけて」で押し留めていた涙が溢れ出し、「断章II」では嗚咽が漏れてしまいました(書いている今もちょっと喉が詰まる)。

アルバム1枚で、そこらの映像よりもはるかに豊かな眺めを作り出すヨハン・ヨハンソン。そんな彼が『ブレード・ランナー』の続編で音楽を担当する(!)というのですから、今から楽しみでなりません。

こちらは彼のデビュー作。堅さはあるけれど、若い疾走感もあって気持ちがいい。

Englaborn

Englaborn

 

(こちらはこのブログ上で聴けるようです)


Jóhann Jóhannsson - Odi et amo

そして、やっぱり悲しい(笑)。表題作の「Odi et amo」とは、「我憎み、我愛す」。曲中の歌詞も同じフレーズで始まるカトゥッルス(古代ローマの叙情詩人)の詩そのままになっています。

選考外:MASSIVE ATTACK『Ritual Spirit』 

Ritual Spirit (EP)

Ritual Spirit (EP)

 

 あくまで「アルバム」が選考対象だったためベスト3からは除外しましたが、Trickyの帰還、一筋縄ではいかないPVの数々。EPでこんなに充実れてしまうと、次のフルアルバムへの期待が止まりません。ほんと、去年はこればっかり聴いてたなぁ。

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ミュージックビデオ編でも思いましたが、ここに挙げたベスト3の他にも、各作品をつなぐ数多の名作・佳作があったのだろうと痛感します。どんな作品も互いに影響しあったり、同じ思想や世相の影響を受けたりしているものだから。来年に書く2017年版は、ジャンルもレビューもより充実したものにさせたいと思います。