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いつも心にデカダンを。

【日記】2017年6月27日

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(Gaienmae, Tokyo 2017)

最近みたいに日が長くなると、職場から家まで歩いて帰る。出来れば冬も歩きたいけど、まあまあ暗い道があるのと、冬は自分の生命力が低下するのとで、夏だけの運用になっている。

道中は写真の撮りどころも沢山ある。初夏の夕暮れがとても美しいこと、立ち並ぶビルがこぞってたそがれること、そして花たちが昼とは違う「貌」を持つこと。私の好きな貌は晴れよりも曇り、昼よりも夜にいつも属している。

薄暮の歩行にはFrank Oceanが合う。音と空の色が寸分違わない。彼の声と、辺りの生温かさも。あとはArcaの『Arca』。自身の名前を冠した最新作は、イヤホンを通して街の色を破壊的に変えてしまう。前作に比べれば一見穏やかだが、相変わらずの制御不能なエネルギーもびりびりと感じる。8月の来日がとても楽しみだ。

それから、今年の初めに見つけたMitski。「90年代のオルタナティヴ・ロックを踏襲しつつ時代を超える普遍性をもつ」といろんな人が言っている。私もそう思う。

youtu.be

『Your Best American Girl』は「アメリカ人の恋人」と「そうでない私」の間にある「淵」の歌だけれども、両者は何にでも置き換えが可能だ。先天的なもの、後天的なもの、もっと個人的なこと…あいだに「淵」があると思うものなら何でも。

「あなたは夜を見ることがない」という程のまばゆい陽性(少なくとも自分からはそう見える)を持つ相手のいる場所に、どう頑張っても辿りつけそうにない。サビでそう歌うMitskiの声は、笑いとも涙声ともつかない高揚を見せる。彼女の代わりにワンワン泣いてるようなギターも相まって、聴く方はめいっぱいしぼられた雑巾のようになる。しかしそうした高揚を繰り返しながらも、Mitskiは始めでそうしたように、ラストを静かに締めくくる。それを選んだのは自分だと決意を述べるように。

夜だって昼とつながっているし、お互いの面影も追える。それでも一つになることはない。自分もまたそういう恋をしたことがあったなぁと思う。今日も聴きながら帰ろう。もちろん歩いて。

 

Frank Ocean。各所で2016ベストアルバムと評された本作。全編を通してperfectだと思う。

Blonde [Explicit]

Blonde [Explicit]

 

ジャケットはすごいが中身もすごい。前作『mutant』よりも聴きやすいので、これを機に是非。 

Arca [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (XLCDJ834)

Arca [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (XLCDJ834)