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いつも心にデカダンを。

【日記】2016年7月19日

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会社を出たらちょうど雨上がりだった。蒸した空気の向こうから、森の香気が立ちのぼってくる。ひぐらしは夏の終わりに鳴くものと思ったが、ここでは油ぜみと合唱している。

ミニマリストにはなれそうもないな、と思う。この匂い、空気の温度、ひぐらしの声と雑踏の音、全部とっておきたい。できれば違うヴァージョンで、何度でも。何日でも。

あーあ、そうなんだ。本や服、ものやことに限らず状況も、ひとの気持ちやまなざしも、ぜんぶぜんぶとっておきたい。映画『ラビリンス』の迷宮にある鏡台みたいに、ごちゃごちゃした香水瓶や、いつ使うか分からない装身具、詩にもなれない書き付けに囲まれて暮らしていたいのだ。それらがあらかじめ持っている「涙」といっしょに。

かくして中年女は、ひとの嗤いもさほど気にせず蒐集にいそしむのでした。